別れるって言うしかなかった。あの時は。

歩いていたら、ふっと沈丁花の香りがした。
すごく好きな匂いなんだけど、この花の季節に失恋したから、
思い出ししまう。あの人とのこと。
 
沈丁花の咲く季節に、すごく好きだった人と別れた。
もうだめだなっていう決定的な出来事があったのが、
この花が咲いていた頃だった。
 
花の香りがし始めた頃に、別れるかどうかって悩んでいて、
花が終わる頃に、さよならした。

あの時、毎晩この花の香りがする道を、歩いて帰った。
 
あの人と
「沈丁花の匂いがするね」って話しながら帰ったこともあったな。
 
別れるを決めるのは、私だった。
 
あの人は、続けるのも、やめるのも私が決めていいからって言って、
いつもと変わらない態度だった。
 
ずるい。
 
私から別れを決めたとしても、これじゃあ失恋だよ。
「別れる」って言うしかなかった。あの時は。
 
いろんな事情を考えて、私の行きたい方向を考えたら、
別れるしかなかったよ…。
 
切ないって想いながら、過ごした季節。
 
だから、沈丁花の香りがすると、
胸が痛くなる。
 
もう忘れていたはずの、
あの時の胸が痛くて、苦しくて、切ない記憶が、よみがえってきてしまう。 
 
匂いと記憶って、不思議なくらいリンクしてる。
  
沈丁花の香り、好きなんだけど、
なんだか泣きたい気持ちになってしまう。
毎年ね。

遠野まりこ(Toono Mariko) OFFICIAL

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