思い出はきれいに残るから、切ない。終わりの方じゃなくて、出会った頃の方が鮮明だから切ない。

私は、別れた人との思い出の写真は全部捨ててしまう。
もう顔も、いっしょにいた時間も景色も見たくないから。
だから全部捨ててしまう。
プレゼントのお気に入りの腕時計も捨てた。
 
その物を見て、いっしょにいたことを思い出すことがいやだから。
 
それに、こわいのかもしれない。
あの頃の思い出に縛られそうになる自分が。
 
私は弱いから、あの人の面影が少しでも残っているものがそばにあったら、
忘れたい「好きだった」気持ちを思い出しそうになる。
 
写真なんていらない。
なくなってしまった思い出なんていらない。
 
でもこの前、みんなでいっしょに写っている写真の中に、
ふいに別れたあの人を見つけた。
 
あの人が笑ってる。
 
この時って、まだ付き合っていない頃だったはず。
 
みんなで遊びに行ってた時、
あなたの運転する車の後ろの席で、
バックミラーで目が合うたびに、ドキドキしていた頃だっけ…。
 
思い出はきれいに残るから、切ない。
 
終わりの方じゃなくて、出会った頃の方がなぜか鮮明だから、
だから切ない。
 
この写真はどうしたらいいんだろうって迷った。
 
まだ恋が始まっていない、出会った頃の写真。
まださよならへの道が始まってない頃の写真。
 
夏の日だね。
この後、みんなで遊園地に行ったんだよね。
夕方、ふたりで散歩したんだよね。
 
でもこれは、まだあなたとのふたりの時間じゃない時の写真だから、
とっておいてもいいのかな。
 
みんなとの思い出の写真だから、とっておいていいのかな。

遠野まりこ(Toono Mariko) OFFICIAL

作家遠野まりこ(Toono Mariko)のオフィシャルサイト。「恋は終わったあともまだこんなにせつない」(大和書房)が電子書籍でも人気。また、NFTマーケットプレイスOpenSea(オープンシー)で写真のクリプトアート作品にもチャレンジ中。誰もがNFT作品をつくったり、気軽に購入することができるようになるためには、どうすればいいか考える&日々の出来事サイトです。

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